捨てられ仮面令嬢の純真
命じられた結婚
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先王の葬儀が厳粛に行われ、喪は一年と定められた。
現在は空位の期間にあたるが、実際はリュシアンが王さながらにさまざまな事柄を取り仕切らねばならない。マルロワ王国は華やかな文化を誇るが、国力は低下気味で経済の建て直しが急務なのだ。国政を滞らせてはいられなかった。
国璽を手にし最初は鼻高々だったリュシアンは、しかし二ヶ月もすると飽きたらしい。さまざまな裁可を臣下に丸投げする姿勢を見せ始めた。宰相であるラヴォー公爵――レオの父親は、それを苦々しくながめていた。
執務を放棄したリュシアンが常にそばに置くようになったのはミレイユだ。
父の抑えつけがなくなるなり、婚約者を妹に取り替えた――というリュシアンの行動は、もちろん好意的には迎えられなかった。貴族たちの間でヒソヒソされていると聞き、リュシアンは苛立つ。
「何故だ。愛のない結婚などしても互いに不幸なだけだろう」
不満をもらした相手は、マティアス・ド・ラヴォーという。レオの兄だった。