捨てられ仮面令嬢の純真

ありのままのセレス


 空位期間は短い方がいい。そう考えてレオの戴冠式は早急に準備された。
 冬の寒さがゆるみ春のきざしが感じられるようになった頃。
 臣下たちも待ち望んだその日がやってくる――。


 セレスがいるのは王都の大聖堂。レオも一緒だ。
 ここは結婚式も挙げた場所だが、今度はみずからの戴冠式に臨むことになるなんて。あのひっそりした式の時には思いもしなかった。

「レオさま――ご立派です」
「セレスこそ、とても優美だ」

 騎士団のではなく、王として正装したレオ。毛皮で縁取られたマントを羽織り、堂々と力強い姿だった。
 セレスは夫の晴れ姿にときめいてしまったが、自分だってなめらかなローブにマント。神々しいばかりでレオは見とれてしまう。だが――。

「――本当に、仮面はなくていいのか」

 レオは妻に確認した。


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