ここまでコケにされたのだから、そろそろ反撃しても許されますわよね?

第39話 格の違い

 税を取り立てる役場の者と領民との間で、小競り合いが頻発している。
 そのたびにポールは火薬の使用の許可を出した。

「ねぇ、ポール。どうしてみんな楯突くの? ポールとライラは未来の国王と王妃なんでしょう? むしろ敬わなきゃいけないのに、なぜそんな簡単なことが分からないのかしら?」
「目先のことしか考えられない愚民どもだからな。安心しろ、奴らにはきちんと俺様の尊さを思い知らせてやる」

 テーブルいっぱいに並べられた贅沢な食事は、あまり手を付けられることなく下げられていく。
 食材にこだわり見栄えを良くしないと、ライラの機嫌が悪くなり結果ポールの逆鱗に触れてしまう。
 これまでも、下げられた食事は使用人の間で分け合うのが慣習となっていた。
 だが食糧不足が顕在化してきている今では、奪い合いの勢いで最下層の者はほぼありつけない状況だ。
 そう言った感じで屋敷内でも、水面下で不平不満の声が上がってきている。
 それでも下町で暮らす者よりは好待遇だ。
 そんな打算の中で、シュナイダー家はようやく機能している状況だった。

「旦那様、本日は西地区で暴動が」
「またか。いつものように火薬で蹴散らせ」
「ですが火薬の在庫が尽きつつありまして……」
「なんだと? なぜ早く仕入れない?」
「それが……取引先の商会が、領民に危害を与えることが使用目的であれば、こちらに売ることはできないと……」

 もっともな主張に、しかしポールは片眉を上げた。
 淡々と報告してくる家令を、不満そうな顔で睨みつける。

「シュナイダー公爵家に物申すとは生意気な。一体どこの商会だ?」
「シュミット侯爵家が営む商会にございます」
「シュミット家が? いいだろう。お前たちでは当てにならん。俺自らが交渉に出向いてやる」

 どや顔で言ったポールは自身の能力を信じて疑わないようだ。

「大丈夫なの? 今外に出たら危ないのでしょう?」
「なに、心配は無用だ。俺は未来の国王だぞ? 誰もが喜んで俺を身を挺して守るに決まっている」
「そうよね! ポールほどこの国に必要とされてい人間はいないものね!」
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