ここまでコケにされたのだから、そろそろ反撃しても許されますわよね?

最終話 逆転の未来へ

「お爺様にそこまで言われると、わたくしその気になってしまいそう」
「いやいやいや、駄目だアンドレア! それならシュミット家を一緒に盛り立てよう! この子のためにも、な?」
「そんなに必死にならなくっても。この子が大きくなるまでは、わたくしも大人しくしているわ」
「なに、今すぐに決めずとも良い。なんならひ孫を王にするか。わしもあと十年はくたばる気はないのでな」
「それも駄目です! この子はシュミット家の大事な跡取りなんですから!」

 慌てたエドガーが、隠すようにアンドレアごと赤ん坊を抱え込んだ。
 どこまでが本気か分からない顔で、祖父は面白そうにそれを眺めている。
 一年前には思いもしなかった日常だ。
 そんな人生を歩んでいることに、アンドレアはなんだか不思議な気持ちになった。
 以前のアンドレアは、領地経営と、ポールと、数少ない友人と。
 そしてシュナイダー家だけが生活のすべてだった。

(思えば、わたくしはそんな狭い世界で生きていたのね……)

 今見えるのは、無限の世界だ。
 どんな未来も選び取ることができる。
 アンドレアの目の前には、そんな景色がどこまでも広がっているように思えた。
 あの家で何も動かず我慢ばかりを続けていたら、今頃は一体どうなっていただろう。
 ふとそんなことを考える。

(ポールにこき使われて、領地経営に追われて、子供を産んだライラに毎日馬鹿にされて……)

 公爵夫人という張りぼてをかぶり続け、アンドレア個人として生きることなく、シュナイダー家で一生を終えていたら――。
 エドガーに愛される喜びも、この腕に抱くこの子の重みも、アンドレアは知ることはできなかった。
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