ここまでコケにされたのだから、そろそろ反撃しても許されますわよね?

第2話 お飾りの妻に甘んじろと?

「つまりはわたくしと離婚してライラと結婚したい。あなたはそう言っているのね?」

 痛むこめかみを指で押さえ、努めて冷静に聞き返した。
 ポールとアンドレアはいわゆる政略結婚だ。
 家同士の結びつきを強めることが目的ならば、アンドレアの代わりに妹のライラを娶っても何も問題はなかった。
 もちろん外聞の悪い話ではあるが。

「違う、そうじゃない。ライラには子を産ませるだけだ。俺はお前と離婚する気はない」
「ちょっと待って。離婚もしないのに、どうしてこの()に子供を産ませると言うの?」

 貴族社会では跡取りを産むのも妻の務め、むしろ最優先されるべき重要事項だった。
 本来ならそれはアンドレアの役目のはずだ。
 そこになぜライラがしゃしゃり出て来るのか。

 それにライラと添い遂げたいのなら、アンドレアが身を引けばいいだけのことだ。
 なのに離婚する気はないなどと、まるで意味が分からない。
 ライラだって納得できる話ではないだろうに。
 しかしライラは黙ってポールにしなだれかかっている。
 その満足げな顔を見て、アンドレアはますます訳が分からなくなった。

「こんな簡単なことがなぜ分からない? アンドレアが身籠ったら、その間誰が仕事をすると言うんだ」
「え? そんなもの……」

 ポールがすればいいだろう。
 そもそも領地経営の仕事は、初めからポールの役割なのだから。

「そんなものとはなんだ。きちんと公爵夫人としての自覚を持て」
「そうよ、お姉様。情けないにもほどがあるわ」

 開いた口が塞がらないとはこのことか。
 反論することも忘れ、唖然としてアンドレアはふたりを見やることしかできなかった。

「それに出産は命の危険を伴うだろう? 万が一アンドレアに何かあったら、この先の領地経営はどうなるんだ」

 だから代わりにライラに子供を産ませるというのか。
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