ここまでコケにされたのだから、そろそろ反撃しても許されますわよね?
第33話 あの日の顛末
「ゆっくり行くぞ。暗いから足元に気を付けてくれ」
エドガーに手を引かれながら、暗闇の細い通路を足元に集中して進んでいく。
ここは戦の絶えなかった古い時代に作られた脱出用の隠し通路だ。
使われなくなって久しく、今はシュナイダー家当主とその伴侶にだけ存在が伝えられるのみとなっていた。
「怖くはないか?」
「ええ、なんともないわ。だってエドガーがいるもの」
その直後、アンドレアの鼻がエドガーの背中にぶつかった。
「ちょっと、いきなり立ち止まらないで!」
「アンドレア……あとで覚えていろよ?」
低く返してきたエドガーは、再びアンドレアの手を引き歩き出す。
「覚えてろって、一体なんなわけ?」
「全面的にアンドレアが悪い」
「なっ、意味が分からないわ」
「あとでたっぷり教えてやるよ」
握る手に力を込めて、エドガーはそっけなく返してきた。
やはり意味が分からなくて、アンドレアは首をかしげるしかない。
「それにしても、あのアンドレアはよくできていたな」
「そうでしょう? わたくしも届いたとき、鏡を見ているかと思ったわ」
エドガーの言っているあのアンドレアとは、寝台に横たえていた蝋人形のことだ。
「あれはどこから調達したんだ? あそこまで精巧に作れる職人など聞いたこともないが」
「王族にのみ伝わる秘匿されてきた技術らしいわ。お爺様にお願いして特別に作っていただいたの」
「国王に?」
「ええ。今回蝋人形を使うことを考えついたのも、すべてお爺様のお陰なのよ」
あの日、二度目の見舞いで祖父に会いに行ったとき、アンドレアは確信していた。
天蓋の降ろされた寝台に横たわっていたのは、祖父そっくりの蝋で作られた人形だったのだろうと。
一度目の面会時は薄暗い天蓋の中だったこともあり、違和感という形でしか認識できなかった。
だが、アンドレアはあとから気づいた。
薬草の青臭さに紛れていたのは、確かに蝋特有の臭いだったのだと。
エドガーに手を引かれながら、暗闇の細い通路を足元に集中して進んでいく。
ここは戦の絶えなかった古い時代に作られた脱出用の隠し通路だ。
使われなくなって久しく、今はシュナイダー家当主とその伴侶にだけ存在が伝えられるのみとなっていた。
「怖くはないか?」
「ええ、なんともないわ。だってエドガーがいるもの」
その直後、アンドレアの鼻がエドガーの背中にぶつかった。
「ちょっと、いきなり立ち止まらないで!」
「アンドレア……あとで覚えていろよ?」
低く返してきたエドガーは、再びアンドレアの手を引き歩き出す。
「覚えてろって、一体なんなわけ?」
「全面的にアンドレアが悪い」
「なっ、意味が分からないわ」
「あとでたっぷり教えてやるよ」
握る手に力を込めて、エドガーはそっけなく返してきた。
やはり意味が分からなくて、アンドレアは首をかしげるしかない。
「それにしても、あのアンドレアはよくできていたな」
「そうでしょう? わたくしも届いたとき、鏡を見ているかと思ったわ」
エドガーの言っているあのアンドレアとは、寝台に横たえていた蝋人形のことだ。
「あれはどこから調達したんだ? あそこまで精巧に作れる職人など聞いたこともないが」
「王族にのみ伝わる秘匿されてきた技術らしいわ。お爺様にお願いして特別に作っていただいたの」
「国王に?」
「ええ。今回蝋人形を使うことを考えついたのも、すべてお爺様のお陰なのよ」
あの日、二度目の見舞いで祖父に会いに行ったとき、アンドレアは確信していた。
天蓋の降ろされた寝台に横たわっていたのは、祖父そっくりの蝋で作られた人形だったのだろうと。
一度目の面会時は薄暗い天蓋の中だったこともあり、違和感という形でしか認識できなかった。
だが、アンドレアはあとから気づいた。
薬草の青臭さに紛れていたのは、確かに蝋特有の臭いだったのだと。