継母に無能と罵られてきた伯爵令嬢ですが、可愛い弟のために政略結婚をいたします

第11話 落ちた二つの星と夜に咲く花

 時折、シャラシャラと異国の踊り子さんが奏でるような、繊細な音が聞こえてきた。
 リズムを刻んでいないのに、音楽に聞こえるなんて不思議ね。

 音が鳴る方角を振り返ってみると、天井から吊り下げられた金属やガラスの飾りが揺れ、ぶつかり合って音を奏でているのだと分かった。
 どこか幻想的な空間に緊張が増していく。なんだな気後れしそうだわ。

 物珍しくきょろきょろしていると、ルイーゼ様がサンルームの中央を指差した。

「ここは、お婆の仕事部屋だ」
「……お仕事部屋、ですか?」

 示された先には植物の蔓で編まれた大きな椅子があり、そこにウーラさんが深く腰かけていた。

 私たちに気付いたウーラさんは、ゆったりとした手付きで招き、向かいの席に座るよう促した。

 ヴィンセント様にエスコートされ、側に寄って改めて挨拶をした。
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