継母に無能と罵られてきた伯爵令嬢ですが、可愛い弟のために政略結婚をいたします
第12話 まだ続く夜の時に心を惑わせる
ダリアの手が離れても、私の指はポカポカと温かかった。
部屋で一人になってから、ホッと吐息をこぼして天井を見上げた。
今日は色々なことが起きすぎたわ。
幻惑の魔女に覚醒の魔女。私には魔力があるらしいこと。何もかもが青天の霹靂すぎるわ。
私にたくさん協力者がいることは分かったけど……本当に、急な展開すぎて気持ちが追い付けていない。胸の奥がざわつき、拭えない不安が渦巻いている。
ダリアはよかったっていってたけど、このままじゃダメよね。
魔法が使えないんだもの。例えヴィンセント様たちが受け入れてくれたとしても、私は守られるだけの存在になってしまう。
役目があるというなら、私だって、皆のために──
「でも、火すら灯せない……」
ポツリと呟き、空中に火を灯す魔法の印を描いてみる。
体内に魔力があるなら、その印に引き出された火が具現するはず。だけど、魔法陣が現れるどころか、魔力の熱すら感じられなかった。