継母に無能と罵られてきた伯爵令嬢ですが、可愛い弟のために政略結婚をいたします

第13話 次々に知らされる亡きお父様の思い出

 目の前にあるヴィンセント様のシャツは、私の涙でしっとりと濡れてしまっているし、申し訳なさばかりが募っていく。

「少しは落ち着いたか?」
「……は、はい」
「まだ震えている。今夜は、眠れるまでこうしていよう」

 いうが早いか動くのが先か。
 私の身体を抱えるようにして、ヴィンセント様はベッドに身体を横たえた。

 ぴったりと体を寄せられ、心音の近さと温もりに息が止まりそうになった。

 あまりのことに驚いた私の涙は、全部引っ込んでいた。

 座ったまま抱き締められていても、ドキドキしていたのに。こんな近くで鼓動や吐息を感じながらなんて、どうしたらいいの。眠れるわけないわ。

 お父様だってこんな姿を見たら「婚前にふしだらな」って怒るんじゃないかしら。私のことを、嫁にやらないぞなんて言っていたみたいだし。

「こんな姿をレドモンド卿が見たら、泡を吹くか雷が落ちそうだな」
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