継母に無能と罵られてきた伯爵令嬢ですが、可愛い弟のために政略結婚をいたします
第16話 夢から覚めた私を待っていたのは──
目が覚めた私は、ふかふかのベッドに横たわっていた。
まるでそれは、ヴィンセント様と出会ったあの日のようだ。まさか、あの日に戻ったなんてこと、ある訳ないわよね。そんな、巷の大衆文学じゃあるまいし。
ぼんやりする意識の中、小さく笑った私はハッとして勢いよく体を起こした。
「ここは……ダリア、ダリア!」
結婚式の最中だったはず。なのに、見下ろした私の姿は寝間着だった。
そんな、まさか。ケリーアデルを追い出したのは夢だというの。あんなに鮮明な夢があって、堪るもんですか!
ベッドを抜け出そうとすると、私の手を誰かが引っ張った。
「姉様、落ち着いてください」
「……え?」
「今、ダリアを呼んできますね」
にこりと笑った赤毛の少年は、私の手を放すとベッド脇の椅子から降りた。
今、この子は私を姉様と呼んだわ。
まるでそれは、ヴィンセント様と出会ったあの日のようだ。まさか、あの日に戻ったなんてこと、ある訳ないわよね。そんな、巷の大衆文学じゃあるまいし。
ぼんやりする意識の中、小さく笑った私はハッとして勢いよく体を起こした。
「ここは……ダリア、ダリア!」
結婚式の最中だったはず。なのに、見下ろした私の姿は寝間着だった。
そんな、まさか。ケリーアデルを追い出したのは夢だというの。あんなに鮮明な夢があって、堪るもんですか!
ベッドを抜け出そうとすると、私の手を誰かが引っ張った。
「姉様、落ち着いてください」
「……え?」
「今、ダリアを呼んできますね」
にこりと笑った赤毛の少年は、私の手を放すとベッド脇の椅子から降りた。
今、この子は私を姉様と呼んだわ。