継母に無能と罵られてきた伯爵令嬢ですが、可愛い弟のために政略結婚をいたします

第6話 赤紫色のヒースの花が風に揺れる姿は、ざわめく心のよう

 ロックハート侯爵の居城は、広大な領地の中で最も賑わいを見せるシェルオーブにある。レドモンド領からは馬車で十日もかかるし、そんなところに嫁いだら、そう簡単に家へと戻ることは出来ないだろう。

 それを考慮すると、継母が嬉々として縁談を進めようとした下心が見えてくる。ペンロド公爵夫人のためというのは建前ね。レドモンド家の財産を管理していた私がいなくなれば、好き放題出来ると思ったんじゃないかしら。

 継母の持ち込んだ縁談騒動から一か月後。
 私は馬車に揺られていた。今日までの日々を思い返すと、疲れがどっと押し寄せてくる。

 あの日、私は早々にロックハート家へ確認の書状を出した。継母と交わした王都での会話は、単なる社交辞令ということもある。そうであってくれと思って待った返事には、一度お茶会をしましょうと書かれ、日時と場所が指定されていた。
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