90秒で始まる恋〜彼と彼女の攻防戦
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いつものように目覚めのホットコーヒーを飲んでから、軽く何かお腹に入れようと冷蔵庫を開けた。

そこには、昨日買い物した食材がたくさんあり、ジャガイモを目にした私は、そうだったと、ため息をつく。

作るのが面倒になり、『自分だけならメニューの変更ができるのに』とぼやいても、向井さんに作ると約束してしまった以上作るしかない。

もう、なんで約束しちゃったかな…

冷蔵庫の上に置いてあるクロワッサンを温めずに口に加えたまま、カレーの食材を出し、お米を何合炊くか迷って3合分を洗い炊飯ボタンを押した。

人参、じゃがいもと順にピーラーで皮を剥いていたら、ピーラーで指先を剥いてしまった。

あっあー…

ジンジンとする痛みと血が滲む指先を水道水で洗った後、常備してある絆創膏を巻いて、痛みを我慢してカレーを作った。

私、頑張ったよと、自分を褒めていたら、自分の身なりが朝、起きたままだったと気がついた。

気がついてよかった…

私のことだから、気がつかずにルームウェアとスッピンのボサ頭でカレーを届けに行っていたかもしれない…

向井さんを意識しているわけではないが、ただ『女として終わってるな』なんて思われたり、『俺に気があるのか』なんて勘違いされるのも嫌なのだ。
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