忘れられない瞳の先で
第9章「揺らぐ同期」
雨の日の翌日。
窓から差し込む光は眩しいのに、心は晴れなかった。
昨日、拓也と一緒に歩いた帰り道を思い出すたび、胸がざわめく。
彼の差し出した傘の温もりは、まだ消えずに残っていた。
「片山」
呼びかけられて顔を上げると、颯真が笑顔で立っていた。
明るい光を背に受けて、いつもの人懐っこさが際立っている。
「お昼、一緒にどう? 新しくできたカフェ、気になってたんだ」
「え、でも混んでるんじゃ……」
「大丈夫、俺が予約しておいたから」
そう言って笑う顔に、思わず胸が温かくなる。
私は頷き、颯真に連れられてオフィスの外に出た。
カフェの窓際の席。
木目調のテーブルの上には、彩りのいいランチプレートが並ぶ。
颯真はフォークを手にしながら、真剣な眼差しを向けてきた。
「片山、最近元気ないよな」
「……そんなことないよ」
「ある。俺、ずっと見てるから」
視線を逸らせなくなる。
颯真は普段ふざけてばかりなのに、この時ばかりは誠実な声だった。
「俺さ……お前のこと、大事にしたいって思ってる」
「え……」
心臓が跳ねる。
颯真の口から出た言葉に、胸が揺れた。
「誰かに泣かされるの、見たくない。俺なら――」
その先を言おうとした瞬間。
カフェの入口に視線をやった颯真が、ふっと言葉を止めた。
つられて振り返ると、そこには拓也の姿があった。
偶然なのか、それとも。
彼の視線が私たちに注がれ、黒曜石のように鋭く光る。
「……」
言葉にならない沈黙が落ちる。
颯真は苦笑し、フォークを置いた。
「続きは、また今度にするよ」
柔らかな声なのに、どこか切なさが滲んでいた。
私は胸の奥がざわめいて、俯いたまま言葉を返せなかった。
窓から差し込む光は眩しいのに、心は晴れなかった。
昨日、拓也と一緒に歩いた帰り道を思い出すたび、胸がざわめく。
彼の差し出した傘の温もりは、まだ消えずに残っていた。
「片山」
呼びかけられて顔を上げると、颯真が笑顔で立っていた。
明るい光を背に受けて、いつもの人懐っこさが際立っている。
「お昼、一緒にどう? 新しくできたカフェ、気になってたんだ」
「え、でも混んでるんじゃ……」
「大丈夫、俺が予約しておいたから」
そう言って笑う顔に、思わず胸が温かくなる。
私は頷き、颯真に連れられてオフィスの外に出た。
カフェの窓際の席。
木目調のテーブルの上には、彩りのいいランチプレートが並ぶ。
颯真はフォークを手にしながら、真剣な眼差しを向けてきた。
「片山、最近元気ないよな」
「……そんなことないよ」
「ある。俺、ずっと見てるから」
視線を逸らせなくなる。
颯真は普段ふざけてばかりなのに、この時ばかりは誠実な声だった。
「俺さ……お前のこと、大事にしたいって思ってる」
「え……」
心臓が跳ねる。
颯真の口から出た言葉に、胸が揺れた。
「誰かに泣かされるの、見たくない。俺なら――」
その先を言おうとした瞬間。
カフェの入口に視線をやった颯真が、ふっと言葉を止めた。
つられて振り返ると、そこには拓也の姿があった。
偶然なのか、それとも。
彼の視線が私たちに注がれ、黒曜石のように鋭く光る。
「……」
言葉にならない沈黙が落ちる。
颯真は苦笑し、フォークを置いた。
「続きは、また今度にするよ」
柔らかな声なのに、どこか切なさが滲んでいた。
私は胸の奥がざわめいて、俯いたまま言葉を返せなかった。