忘れられない瞳の先で
第6章「心を乱す視線」
夕方のオフィス。
窓の外では陽が沈みかけ、ガラスに橙色の光が反射していた。
コピー機の前で紙詰まりに苦戦していると、後ろから声がした。
「片山、困ってる?」
振り返ると颯真が立っていた。
白いシャツの袖をまくり、軽やかに操作盤に指を走らせる。
「ほら、こうすれば簡単に直る」
「あ、ありがとう」
「お礼に、今度コーヒー奢ってもらおうかな」
冗談めかした笑顔に、思わず笑ってしまう。
緊張していた肩の力がふっと抜けた。
「片山って、もっと人に甘えればいいのに」
「え?」
「頑張りすぎるからさ。……そういうとこ、放っておけない」
その一言に、胸がかすかに揺れた。
颯真の優しさは、時に心を支えてくれる。
でも――。
「……仲いいな。」
低い声が背後から響いた。
驚いて振り返ると、拓也が立っていた。
鋭い黒曜石の瞳が、颯真と私を交互に見ている。
「西園寺さん」
颯真は明るく声をかける。
しかし、拓也の表情は固いままだった。
「片山、もうすぐ提出の資料、できてるか?」
「あ、はい。あと少しで」
「……そうか」
必要以上に冷たい声。
それはまるで「颯真と笑い合う時間があるなら、仕事をしろ」と言われているようで、胸が痛む。
「じゃあ、後で俺のところに持ってきてくれ」
拓也はそれだけ告げ、足早に去っていった。
残された空気は妙に張り詰めていて、私は言葉を失った。
「……なんか機嫌悪そうだったな」
「気のせい……だと思う」
笑顔を作ってごまかすけれど、心臓の鼓動は止まらない。
なぜ彼が、あんな表情をしたのか――答えは分からない。
ただひとつ分かるのは、私の心がまた彼に乱されているということ。
窓の外では陽が沈みかけ、ガラスに橙色の光が反射していた。
コピー機の前で紙詰まりに苦戦していると、後ろから声がした。
「片山、困ってる?」
振り返ると颯真が立っていた。
白いシャツの袖をまくり、軽やかに操作盤に指を走らせる。
「ほら、こうすれば簡単に直る」
「あ、ありがとう」
「お礼に、今度コーヒー奢ってもらおうかな」
冗談めかした笑顔に、思わず笑ってしまう。
緊張していた肩の力がふっと抜けた。
「片山って、もっと人に甘えればいいのに」
「え?」
「頑張りすぎるからさ。……そういうとこ、放っておけない」
その一言に、胸がかすかに揺れた。
颯真の優しさは、時に心を支えてくれる。
でも――。
「……仲いいな。」
低い声が背後から響いた。
驚いて振り返ると、拓也が立っていた。
鋭い黒曜石の瞳が、颯真と私を交互に見ている。
「西園寺さん」
颯真は明るく声をかける。
しかし、拓也の表情は固いままだった。
「片山、もうすぐ提出の資料、できてるか?」
「あ、はい。あと少しで」
「……そうか」
必要以上に冷たい声。
それはまるで「颯真と笑い合う時間があるなら、仕事をしろ」と言われているようで、胸が痛む。
「じゃあ、後で俺のところに持ってきてくれ」
拓也はそれだけ告げ、足早に去っていった。
残された空気は妙に張り詰めていて、私は言葉を失った。
「……なんか機嫌悪そうだったな」
「気のせい……だと思う」
笑顔を作ってごまかすけれど、心臓の鼓動は止まらない。
なぜ彼が、あんな表情をしたのか――答えは分からない。
ただひとつ分かるのは、私の心がまた彼に乱されているということ。