婚活令嬢ロゼッタは、なによりお金を愛している!

21.出発の朝に

 そうして、あっという間に出立の日がやってきた。
 王城にはセリーナやクローヴィスが乗るのに加え、荷物を運ぶためにたくさんの馬車が用意されており、ロゼッタは驚きに目を瞠る。


「やっぱり、海外での公務というのは大掛かりですのねぇ」


 地方公務の場合は人の乗る馬車があればほぼ事足りるため、どうしても差を感じずにはいられない。いつもは見送る側なのに、今回は見送られる側だから、なおさらそう思うのだろう。


「いいなぁ、ロゼッタは。セリーナ殿下と一緒に隣国に行けるなんて、羨ましい」


 クロエがそう言ってロゼッタの肩にのしかかる。ロゼッタはクスクス笑いながら「遊びに行くんじゃありませんわ」と首を横に振った。


「わかってるけど。でも、国外旅行なんてそうそう行けるもんじゃないでしょう?」

「クロエったら! お金持ちの男性と結婚すれば、何度でも気兼ねなく行けるようになりますわ。だからこそ、お相手選びに妥協してはいけないと何度も言ってますでしょう?」

「それもわかってるけど。私はロゼッタみたいには頑張れないっていうか、お金より愛を取るのも悪くないと思いはじめているわけで……」


 クロエは視線をそっと城の上階の方へ移す。王太子の執務室がある方角だ。


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