婚活令嬢ロゼッタは、なによりお金を愛している!

23.馬車

 馬車が静かに走り出した。ロゼッタはクローヴィスに向かってニコニコと微笑む。どこからでもかかってこい、という気持ち――だったのだが、彼は一向に口を開かない。ただ黙って窓の外を見つめていた。


(なんだ。身構える必要なんてなかったのかも)


 ロゼッタはホッと息をつき、少しだけ肩の力を抜く。隣でセリーナがふふっと笑った。


「ロゼッタってわかりやすいわよね」

「え?」


 なにが?と首を傾げるロゼッタを見つめつつ、クローヴィスもクスクスと笑い声を上げる。


「こういうところが可愛くてたまらないんだ。反応が見たくてついつい遊んでみたくなる」

「ええ?」


 ロゼッタは唇を尖らせつつ、思わず身を乗り出した。
 可愛い、は当然のことだから構わない。だが、遊んでみたくなるというのは聞き捨てならない。クローヴィスをじろりと睨みつければ、彼は満面の笑みを浮かべた。


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