婚活令嬢ロゼッタは、なによりお金を愛している!

27.目に見えるもの、見えないもの

 王室主催の夜会とあって、会場は重厚かつ落ち着いた雰囲気だった。


(ついつい浮かれてしまったけれど、セリーナ殿下とクローヴィス殿下にとっては、この夜会も大事な公務の場なのよね)


 他国の王族や貴族と交流を深める貴重な機会。クローヴィスにエスコートを受けているセリーナの後ろを歩きつつ、ロゼッタは気を引き締める。


「セリーナ殿下!」


 会場に入ってすぐに、今回の公務の目的――王太女ライラから声をかけられた。
 一介の侍女であるロゼッタが、こうして顔を合わせるのははじめてのこと。ロゼッタは深々と頭を下げる。


「どうぞ楽にして。セリーナ殿下の侍女かしら?」

「ええ。ロゼッタというの。可愛いでしょう? 自慢の侍女なの」

「セリーナ殿下……」


 どうやら二人は相当仲良くなったらしい。砕けた口調で会話を交わしている。
 それにしても、こんなふうに紹介をされるとは思っていなかったので、ロゼッタは恥ずかしくなってしまう。


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