婚活令嬢ロゼッタは、なによりお金を愛している!

30.告白

 曲が終わったところで、ロゼッタはトゥバルトと微笑み合う。と、背後から強く手を引かれて、思わず声をあげてしまった。


「ロゼッタ嬢」

「え? クローヴィス殿下」


 誰かと思えば、それはクローヴィスだった。人前ではいつも浮かべている笑みが消え去り、切羽詰まった表情を浮かべているように見える。


「あの、なにか……」

「こっちに来て」


 クローヴィスはそう言うと、ロゼッタを連れて人混みをぐいぐい抜けていく。道中、驚いた表情のセリーナの表情が目に入る。ロゼッタが口を挟むまもなく、クローヴィスは会場を出てしまい、二人は夜の庭園へと到着した。


「クローヴィス殿下、さすがに強引がすぎますわ!」


 ようやく立ち止まったところで、ロゼッタが抗議する。と同時に、クローヴィスがこちらを振り返った。


「クロ……」


 けれど、彼の顔を見た瞬間、ロゼッタはなにも言えなくなってしまった。切なげに細められた瞳に、固く閉じられた唇。まるでクローヴィスの苦しさが自分に乗り移ったかのようだった。


< 186 / 318 >

この作品をシェア

pagetop