婚活令嬢ロゼッタは、なによりお金を愛している!

9.どうして私が?

『どうして私が? どうしてあなたにまで与えなければならないの?』


 ロゼッタの頭のなかで冷たい声が鳴り響く。女性の甲高い声だ。


『勘違いしないで。あなたにはそんな権利はないのよ』


 クスクスと嘲るような笑い声。
 ズキン、ズキンとロゼッタの胸が痛む。
 どうして……? と問いかけたくて。けれどそんなことは無意味だとわかりきっていて。ロゼッタの頬が冷たく濡れる。


『すまない、ロゼッタ。本当にすまない』


 誰かのすすり泣きが聞こえる。先ほどとは違う男性の声だ。


『私が本当に大事なのはおまえなんだ。けれど……すまない』


(やめてよ)


 そんな謝罪にはなんの意味もない。謝って、自分が楽になりたいだけだとわかっている。ロゼッタからすれば、かえって腹が立つだけだ。


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