婚活令嬢ロゼッタは、なによりお金を愛している!
【2章】婚活令嬢、攻略開始

10.ウィルバートとのデート①

 ロゼッタはその日浮き足立っていた。何日も前からお肌のお手入れを入念に行い、化粧や髪型を試行錯誤して今日という日を迎えた。三百六十度、どの角度から見ても可愛い――誰が見てもそう思わずにはいられぬよう、細心の注意を払った。


(なんとしても! なんとしてもこの機会をものにしなくては!)


 凄まじいほどの気合。けれど、それが表面には出ないよう、何度も何度も鏡に向かって笑顔の練習を行う。男性はガツガツした女性を苦手とする。表向きは『なんとも思っていません』というふりをしながら、本心では『どうやってこの男を射止めるのか』を必死に考え、計画を行動に移す必要があるのだ。
 大事なのは相手に『隙がある』『いけそう』だと思わせること。それでいて高嶺の花のように思わせること。難しいことではあるけれど、ロゼッタならばできる――そう自分に言い聞かせ、ロゼッタは鏡台の前から立ち上がった。


「ウィルバート様!」

「おはよう、ロゼッタ嬢」


 今日のデートのお相手は、実業家のウィルバートだ。ロゼッタは満面の笑みを浮かべ、ウィルバートの乗った馬車へと駆け寄る。


「遅くなってごめんなさい」

「大丈夫、時間通りだよ。そんなに走らなくてよかったのに」


 ふわりと優しく目を細め、ウィルバートがじっとロゼッタを見つめる。余裕たっぷり、大人の魅力を存分に味わいながら、ロゼッタの胸がトクンと跳ねた。
 ――が、彼女がなにより注目しているのは、ウィルバートの身につけているものだ。


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