婚活令嬢ロゼッタは、なによりお金を愛している!

2.まどろっこしいのは嫌いですの

 それは、夜会から数日がたったある日のことだった。


「あっ……」


 ロゼッタが小さく声をあげる。ライノアの勤め先――王太子の執務室でのことだ。


「――先日はどうも」

「ごきげんよう。ライノア様」


 表向きはにこやかに挨拶をされながら、ライノアはロゼッタからの探るような視線を感じる。


「今日は殿下へのおつかいですか?」

「ええ。こちらを王太子殿下に渡すようにと」

「ふぅん――今日はカードはついていないんですね」


 ライノアはロゼッタが差し出した小包を上から下から眺めつつ、フッと小さく笑い声を漏らす。婚約者のいる侯爵令息マルクルに色目を使うぐらいだから、当然王太子にも……と思って出た発言だったのだが。


「まあ……! あちらは特別な男性にしか渡しませんのよ?」


 ロゼッタはほんのり目を丸くし、クスクスと楽しげに笑い声をあげた。


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