一夜限りの契約妻──冷徹御曹司の独占愛は甘すぎて逃げられない

第3章 仮面を超えて

エレベーターを降りるとそこは、オシャレなバーが広がっていた。

バーテンダーに案内され、私たちは窓際のシートに腰を下ろした。

眼下には街の光が宝石のように瞬き、夜空と溶け合っている。

「……綺麗。」

思わずため息が漏れた。

「君のためにあるみたいだね。」

突然の甘い言葉に、私は驚いて顔を向ける。

照明に照らされた横顔は、まるで冗談を言っているようには見えなかった。

「え……っ」

思わず頬が熱くなる。

どんな返事をすればいいのかわからず、視線を夜景に戻す。

胸が落ち着かない。

パーティーのときよりも近い距離。

静かな音楽と、グラスに注がれる氷の音だけが耳に届き、余計に彼の存在を意識してしまう。

「何か飲む?」

「……あまり強くないものを。」

「じゃあ、君にはフルーティーなものを頼もう。」

慣れた様子で注文する聖さんの姿に、私はまた胸を高鳴らせた。

この人は、冷徹な御曹司で、契約のために私を選んだはず。

そう頭で分かっているのに……。

窓の外の夜景よりも、隣に座る彼の横顔の方が、ずっとまぶしく感じられてしまう。
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