Semisweet.
Prologue
─────────菜穂、別れよう。
付き合って4年にもなる婚約してた彼に急にそう言われた。
会社にもお互いの両親にも報告を済ませていて、なんなら結婚式の話だって途中まで進んでいた。
年齢も27歳で、このまま順調に結婚して子供産んで幸せな家庭を築くのだと夢を見て、振られるなんて思いもしなかった。
「…本当、どうするのが正解だったわけ。」
「どうするのが正解、とか無いだろ。あ、すみませーん。生追加ください。」
寂しく独り身に戻った私、咲間 菜穂。
専門学校を20歳で卒業して社会人3年目の時、先輩に誘われた合コンで婚約していた彼と出会って交際を順調に続けてきて、半年前にプロポーズを受けた。
それが先週末会いたいと言われて仕事を早めに終わらせて会いに行ったら色々と質問されてその答えで決めたのか別れようなんて。
彼と付き合うまでずっとボブカットくらいの髪の長さをキープしていて、彼がロングが好きだって言うから伸ばしたし、本当は大人っぽい服装が好きでも、彼がふわふわした女性らしい服装が好きだって言うからあまり好きじゃないワンピースもスカートも身に着けた。
茶髪よりも黒髪が好きだって言うから黒にも戻した。
結果、結婚したら家庭に入ってほしいっていう彼には応えられなくて断ったら、やっぱり菜穂は俺の理想のタイプでは無かったと言われた。
そんな寂しい話から物語のスタートを切った矢先、私は同じ営業部の同期の瑞野 匠。
仕事終わりでスーツを着てネクタイだけ緩めている。整った顔立ちに、身長が高くて社内で人気がある。黒髪なのがまた誠実そうに見えて周りは王子なんて裏で呼んでいるけどどう見ても王子と呼ばれる男ではない。
王子がその辺の普通の居酒屋入って、生追加でとか言っているの誰が考えられるのか。
そんな社内の王子様に奢るから飲みに付き合ってと誘ったのは私だけど。
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