Semisweet.
Episode3
 翌日職場に行くと既に瑞野が居た。

 いつものデスクに整えられた髪型にスーツ。

 何も変わらないのに後姿を見るだけで身構えてしまう。


「…おはよ。」

「はよっす。」


 いつも通り声を掛けるとフロントから裏の事務所に入って来た美佳子さんと目が合った。
 美佳子さんの顔を眺めていると首を傾げられてしまう。

 話したい、このモヤモヤを。美佳子さんに。
 でも今日はお昼が被らないから話せない…。

 そう思いながらも諦めてデスクに着いてメールの確認からする。

 もうすぐ時期的に修学旅行生が来るのでその最終打ち合わせや、そう言ったメールだ。

 GWや盆休み、年末年始がホテル全体として忙しいのだから、当然私も忙しいに決まっているのだけど、修学旅行生が来るこの時期も私はバタバタする。

 厨房やレストラン部門、フロントとの打ち合わせに会場づくりなどのチェックもあって残業がかなり多くなる。

 今の私に元婚約者に会いに行っている暇はない。


「何か出来る事あったら回して。」

「今の所は大丈夫だけど…、色々チェックお願いするかも。」

「おっけー。」


 いつもこんな感じで瑞野とも仕事をしているけど気まずい。

 瑞野に告白されてはいないと言っても気持ちを知っているのだから気まずいに決まっている。
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