秘密の恋/未必の故意
Young adulthood
 季節がめぐり、玲司はめでたく専門学校を卒業。
 玲司の場合、自分の両親が理容師であり、将来的にこの店を継ぐ立場にある。
 常連客のことも早めに覚えておく為、他店での就職はしなかった。

「安永さんよ、よかったねぇ。玲ちゃんが後継ぎになってくれて」
 常連客の爺さんが言う。
「倅は、昔から手先が器用なだけが取り柄だったからね。逆に、家業が床屋じゃなかったら、ちゃんとサラリーマンになれたのかな」
「そうだ。うちの婆さんが、玲ちゃんに見合い写真を持っていけってうるさいから、持ってきたんだよ」

 唐突な言葉に、玲司はギョッとした。
「な、何を言ってるんですか!?僕はまだハタチですよ?」
「まだハタチって、今はそう思うだろう?でも、ハタチを過ぎたら、あっという間に不惑を過ぎるよ」
「不惑って⋯⋯而立を飛ばして?」
「そんなの感じる暇ないね!浦島太郎みたいに、あっという間よ」
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