秘密の恋/未必の故意
Childhood
 二人の出会いは、まだ3歳児の頃まで遡る。
 床屋の息子である玲司は、すぐ向かいに建っている西洋風のお屋敷に興味を持っていた。
 保守的な田舎町なので、アパート以外はどこも似たりよったりの日本家屋であるのに対して、この洋館だけが明らかに浮いている。
 洋館には、玲司と同じぐらいの年頃の子供が住んでいるという噂も聞いていた為、ますます興味がわいた。

 ある日、玲司が外から洋館の広い庭を眺めていたら、長い巻き毛に白いワンピースの幼い少女がぼんやりと立っていた。
 少女は玲司に気づき、二人は少し離れた場所で、しばらく黙って互いのことをジロジロと見ていたが、先に玲司が、
「こんにちは」
 勇気を出して言うと、
「こんにちは」
 と返ってきた。
(絵本で見た、天使か妖精みたいだなぁ⋯⋯)
 玲司はそう思ったものの、何を話していいのかわからず、再度、
「こんにちは」
 それだけしか言えなかった。
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