秘密の恋/未必の故意
We’re All Alone
 玲司の両親が嬉々としてマレーシアへ旅立ったばかりの頃、
(騒々しい両親だったけど、一人の家は妙に静かすぎて、なんだかなぁ⋯⋯)
 そんなことを感じていた。
 日美子はというと、相変わらず、両親とは一度も会っていないという。

 玲司にとって、一人暮らしになって好都合だったのは、誰にも気兼ねなく日美子の屋敷に延々と居座れること。
 相変わらず、日美子の屋敷で世話を焼いていた玲司に向かって、
「ねえ、玲司。一人になって淋しい?」
 そんなことを言い出した。
「え?うーん⋯⋯もう、一人暮らしして当然の年齢だからね。でも、騒々しかった家が、やけにシーンと静まり返ってるのは、まだ慣れないかな」
「淋しい時は、この屋敷のどこか空いた部屋で寝泊まりしてもいいよ」
 まさかの提案に、玲司は頭のてっぺんから落雷して全身がビリビリするのを感じた。
「そ、それは嬉しいけど⋯⋯そんなことしてもいいの!?」
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