秘密の恋/未必の故意
Miss You Like Crazy
 いつも通り、鶏の声で目を覚ました日美子は、キッチンに向かったが、もう既に玲司は出発しており、テーブルには丁寧に朝食が用意されていた。
 ラップの上には、赤く大きな字で、
⚠必ず、一時間に一度は水分補給をすること!
⚠ガスや包丁は絶対に使わないこと!
 誰が読んでも、親が幼い子供に対して書いたとしか思えないような内容のメモが残されていた。
(私、どれだけ無能だと思われてるのかしら⋯⋯)
 明日までの食事は全て冷凍庫に入れてあり、解凍する際には電子レンジを使うように。ガスはダメ!という指示まで記されてある。
(でも⋯⋯いつも、本当によくしてくれて⋯⋯)

 仕事に取りかかった日美子は、玲司の言った通り、一時間毎にタイマーをかけ、水分補給をした。
 昼間は、黙々と仕事に集中していた日美子だが、夕方になり、いつものように、
「ねえ、玲司」
 声をかけたが、当然、何の反応もない。
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