秘密の恋/未必の故意
Epilogue
 クロスワードパズルの手を止め、玲司は窓の外を眺める。
(暇だなぁ⋯⋯)
 今日は、朝からどしゃ降りで、店に来る客も少ない。

 店内には、洒落た洋画のポスターに紛れて、日美子との結婚式の写真がデカデカと額に入れて飾られてある。
 せめて、写真立てにひっそり飾る程度にしておけばいいものを。

 昼食を作るため、今や愛の巣となった屋敷に戻ろうとした時、日美子が店までやってきた。
「どうしたの?髪ならこの前切ったばかりなのに」
「これ⋯⋯」

 日美子が差し出したタッパーの中には、ニワトリの餌か、生ゴミか、もはや何なのかわからない食べ物が入っていた。
「日美子⋯⋯お弁当作ってきてくれたの?」
「うん。でも、なんか不味そうね。ごめん、やっぱりこれは私が食べるから⋯⋯」
「いやいやいや!愛妻弁当なんて嬉しいよ!一緒に食べよう」
 日美子は、玲司が一口目を食べるのを心配そうに見ていた。
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