執拗に愛されて、愛して
1 Reunion
「遅い、雅。」


 玲さんが名前を呼ぶのを聞いて確信した。

 黒崎《くろさき》 雅《みやび》、28歳。大学時代の元彼。
 交際の内最後の1年は遠距離で、会ったのももう5年前だったが、3年も交際していたしその顔も声も雰囲気も忘れる訳が無かった。

 少し違うのはあの時よりも大人っぽくなって、格好良くなっていた。


「夏帆?」

「……。」


 こんな形で会いたくなかった。何でこっちにいるの。

 驚きと複雑な気持ちで何も言葉は出てこない。

 私達は大学の先輩と後輩で、サークルも一緒だった。そこで交際を始めた相手だったが、一足先に遠方で社会人になった雅くんと、まだ学生だった私は遠距離恋愛になって、その結果上手く行かず破局。

 嫌いになって別れたわけでは無く、今も時々思い出してしまう事もあった元彼だった。

 まさかこちらに戻ってきてるなんて思っていなくて、バーで再会なんてこと当然予想もしていなかった。

 姿を見てから動揺してしまって、どう声を掛けていいか分からない。ずっと会いたかった様な、会いたくなかった様な、一言ではとても言い表せない感情。

 雅くんは私の顔を見て少し笑うと「久しぶり」と、声を掛けてきた。
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