執拗に愛されて、愛して
5 Conscious
 いろいろあった休み明け、いつも通り仕事をしているとふと昨日の事を思い出した。


『夏帆ちゃんの事が気になる。』


 そんなことを玲くんに言われた昨夜。どう考えても嘘だということはわかっているのに、嘘を吐いた経緯がわからなくて、そればかりを考えてしまっていた。

 最近自分の身の回りでいろいろと起きすぎて何も集中できない。

 タイピングしていた手を止めて、一息吐く。少し休憩がてらスマホを見ると雅から連絡来ていた。


«昨日様子変だったろ、玲と何の話してた?»


 雅が私の様子を気にすることなんて今までにあったか考えて、少しだけ笑えた。

 今は正直雅との関係の事でも手一杯なのに、玲くんとの事まで考える余裕なんてない。玲くんは誠実な人だとは思うけど、きっと恋愛においての私達の相性は最悪な気がしているし、そもそもお互い好きにならなくて恋にすら発展しない気がしている。

 軽く溜息を吐いて雅にどう返信するか悩んだ。玲くんとのことを話すと面倒なことが起きる気しかしないし、それに2人は同じ職場だし関係がこじれても困る。

 同じ職場で私がこの態度になった理由を知らないということは玲くんから何も聞いていないのだと思う。雅はそこまで察しの悪い男ではないし。


«大丈夫よ、何もない。»


 返事をしてからしばらくバーに行くのは控えて、2人と会うのはやめようと決めた。
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