幼なじみの隠れた執着愛〜再会した彼は策士なCEOでした〜

幽霊みたいな私



「お待たせいたしました、ブレンドコーヒーでございます」
「ありがとうございます」
「こちらこそ、いつもありがとうございます」


 毎朝ブレンドコーヒーを買いに来てくれる、スーツのイケメン。
 黒髪を七三分けにきっちりセットした、とても誠実そうな男性だ。

 背が高くて清潔感があって、店員相手でも礼儀正しい。
 その上、いかにも仕事ができそうな聡明な印象を受ける。

 いつも優しく笑いかけてくれるこの爽やかなイケメンに会えることが、私・鴇田(ときた)望凪(もな)の密かな楽しみ。


「……今日もカッコいいなぁ」


 私は都心にそびえ立つ高層オフィスビルの一階にある、オウルカフェの副店長として働いている。
 あのイケメンも多分このビル内で働いているんだと思うけど、名前も知らない。


「今日も来てましたね、あのイケメン」
「ひよちゃん」
「望凪さんの好きな人」
「ちがっ、そんなんじゃないよ!」


 この子は後輩のひよちゃん。
 シフトが被ることが多くて勤務も長く、一番仲の良い後輩だ。

 私が副店長になる前からの仲なので、今も望凪さんと呼んでくれている。


「ファンっていうか、癒しをもらってるだけだよ」
「えー? でもあっちも望凪さんに気があるように見えますけど」
「そんなわけないって。失礼だよ、ひよちゃん」


 私なんかとは違う雲の上の人だ。
 名前も知らない常連さんと、どうなりたいと思っているわけではない。

 ただ、こうして毎日会えるだけで幸せなのだ。


「望凪〜!」


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