隠れ溺愛婚~投資ファンドの冷徹CEOは初恋の妻を守りつくす~

夢のような一夜

「わ、私どうなっちゃうの……」

 茉結莉は多くの女性スタッフに囲まれながら、あんぐりと口を開ける。
 女性たちは手早く茉結莉をレースのついたエレガントなワンピースに着替えさせると、そのまま大きな鏡の前に座らせた。
 まるで自分がお姫様になったかと錯覚しそうになりながら、長い髪を心地の良いブラシで丁寧に梳かれる。

 夢見心地になりながら、茉結莉は鏡の端に小さく映った森野の姿を見た。
 森野は奥の部屋でソファに腰かけながら、誰かと電話をしているようだ。

『君に最高の恋をプレゼントしよう』

 茉結莉にそう言った森野は、スマートフォンを取り出しどこかへ電話をした後、茉結莉の手を引いて歩き出した。

「今夜は何も言わず、俺にエスコートさせて」

 小さくウインクする森野に、茉結莉の心は自然と沸き立ってくる。

(今夜だけ……今夜だけ、すべてを森野さんに捧げたい……)

 茉結莉は頬を染めると、こくんとうなずいた。

 森野とともに道路脇を進み、しばらく行った先に黒塗りのセダンが見えてくる。
 車は森野を待っていたようで、運転手がサッと現れると丁寧に扉を開けた。
 茉結莉は森野とともに、緊張したままぎこちなく後部座席に乗り込む。
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