隠れ溺愛婚~投資ファンドの冷徹CEOは初恋の妻を守りつくす~

周囲の変化

 事務室でパソコンに向かっていた茉結莉は、昨夜の三砂の顔を思い出して、小さく熱のこもった息を吐く。
 今朝目覚めた時、すでに部屋に三砂の姿はなく、キッチンには洗われたコーヒーカップが伏せてあるだけだった。

(今日は、会社には顔を出さないって言ってたよね……)

 ついつい、今三砂がどこで何をしているのか気になってしまう。
 でも茉結莉は、形だけの妻である自分が、余計な詮索をしてはいけないのだと自分に言い聞かせた。
 すると気持ちを切り替えるように、茉結莉がふるふると大きく首を横に振った時、取引先と電話をしていた大輔がガタンと立ち上がるのが目に入る。

「え? 本当ですか!?」

 大輔は今にも叫び出さんばかりの様子で、身を乗り出していた。

「ありがとうございます! すぐに伺います!」

 大輔は大きな声を事務室に響き渡らせると、興奮を抑えきれないような顔つきで受話器を置く。

「どうしたの?」

 思わず声を出した茉結莉に、大輔はガッツポーズを見せると、輝かせた瞳を覗き込ませた。

「もしかしたら、新規の取引ができるかも知れない」
「新規の取引?」

 首を傾げる茉結莉に、大輔は大きくうなずく。
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