隠れ溺愛婚~投資ファンドの冷徹CEOは初恋の妻を守りつくす~

エピローグ

「慶一郎さん、そろそろ教えてくれてもいいんじゃないですか?」

 移動の車の中で、茉結莉はわざと口を尖らせる。

「まだ、だめだ。今日は何も言わず、俺にエスコートさせてくれるんだろう?」

 三砂は今日何度目かの台詞を楽しげに言うと、隣に座る茉結莉の手をキュッと握り締めた。
 いまだにドキドキして慣れないその温もりに心臓を跳ねさせると、茉結莉は三砂の横顔を見つめる。

 あれからしばらくして、ホシ音響は正式にミサゴファンドの子会社となった。
 三砂は園子の株を取得し、MMファンドに売られた浩二の株の買戻しに成功したのだ。

 そして驚いたのは、第一工場の跡地はミサゴファンドが購入していたことだ。
 新しい工場の建設計画を知らされた時は、茉結莉は父とともに手を取り合って涙した。
 この春からは、大輔が契約を取ってきた新規事業が新工場で始動予定になっている。
 ホシ音響は三砂の元で、新たな一歩を踏み出したのだ。

(すべては慶一郎さんが、皆を守ろうと決意してくれたおかげだ……)

 茉結莉は胸が熱くなるのを感じながら、再び三砂の横顔を見つめる。
 今日は久しぶりに二人で休暇を取ったのもあり、三砂の顔つきは穏やかだ。
 すると茉結莉の視線に気がついたのか、三砂がこちらを振り向いた。
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