明治恋奇譚 〜藤堂様、ミエテマスヨ!~
玲子様、アイツが犯人です。
玲子が救出されてから数日後。
藤堂家の関係者として、将吾は憲兵詰所にて、連行された「ならず者」の取り調べに立ち会っていた。
男は無精髭の浮いた痩せ型で、幾度かの尋問を経ても、口を固く閉ざしたまま椅子に縛りつけられている。
だが、今ここにいるのは、ただの尋問官ではない。
将吾は椅子に腰を下ろし、無言のまま男の目をじっと見据えていた。
沈黙が数分続いたのち、静かな声が室内に落ちた。
「無言を貫いても無駄だ……玲子殿を連れ去った件の依頼主は、誰だかわかっているんだ。隠しても無駄だ」
その言葉に反応して、今まで口を割らなかった男が、ゆっくりと顔をあげた。
その男に将吾は、低い声で問いかける。
「男爵婦人の金払いはどうだった? たいした金額でもないのに引き受けたのは、過去にも繋がりがあって、断れなかったのだろう?」
男の瞳が微かに揺れ、額に大粒の汗が浮かぶ。それは、図星を突かれた焦り以外、何ものではなかった。
「あんな女を庇っても仕方ないだろ!」
そう言って、将吾は足を高くあげ、男の太ももを蹴り上げた。
ガッツと革靴の先端が男の足にめり込む。
「ぐわぁぁ」
男は断末魔のような声をあげた。
それもそのはず、蹴り上げられた太ももには、将吾から受けた傷がある。
その、まだ新しい傷口が開き、包帯に鮮血が滲んでいく。
「悪いな、わざとだ」
「てめぇ……」
それでも将吾は、責め手を緩めず、男の髪を掴み、顔を上げさせた。
「それに聞きたいのは、今回の件だけじゃない。もっと過去の一件のことだ」
「過去……?」
藤堂家の関係者として、将吾は憲兵詰所にて、連行された「ならず者」の取り調べに立ち会っていた。
男は無精髭の浮いた痩せ型で、幾度かの尋問を経ても、口を固く閉ざしたまま椅子に縛りつけられている。
だが、今ここにいるのは、ただの尋問官ではない。
将吾は椅子に腰を下ろし、無言のまま男の目をじっと見据えていた。
沈黙が数分続いたのち、静かな声が室内に落ちた。
「無言を貫いても無駄だ……玲子殿を連れ去った件の依頼主は、誰だかわかっているんだ。隠しても無駄だ」
その言葉に反応して、今まで口を割らなかった男が、ゆっくりと顔をあげた。
その男に将吾は、低い声で問いかける。
「男爵婦人の金払いはどうだった? たいした金額でもないのに引き受けたのは、過去にも繋がりがあって、断れなかったのだろう?」
男の瞳が微かに揺れ、額に大粒の汗が浮かぶ。それは、図星を突かれた焦り以外、何ものではなかった。
「あんな女を庇っても仕方ないだろ!」
そう言って、将吾は足を高くあげ、男の太ももを蹴り上げた。
ガッツと革靴の先端が男の足にめり込む。
「ぐわぁぁ」
男は断末魔のような声をあげた。
それもそのはず、蹴り上げられた太ももには、将吾から受けた傷がある。
その、まだ新しい傷口が開き、包帯に鮮血が滲んでいく。
「悪いな、わざとだ」
「てめぇ……」
それでも将吾は、責め手を緩めず、男の髪を掴み、顔を上げさせた。
「それに聞きたいのは、今回の件だけじゃない。もっと過去の一件のことだ」
「過去……?」