明治恋奇譚 〜藤堂様、ミエテマスヨ!~
藤堂様、訪問します。
重厚な門の前に、馬車が静かに停まった。
最初に姿を現したのは将吾である。
続いて、付添人として同行した尚文が馬車を降り立った。
そして、差し伸べられた将吾の手に導かれるように、着物姿の玲子がゆるやかに姿を見せた。
重厚な門をくぐると、目の前には見事な庭園が広がり、春の色を競い合うように、色とりどりの花々が咲き誇っている。整えられた植え込みの奥には、温室らしき建物まであるのが見える。
「久しぶりに訪れたけど……まるで花の園だな」
尚文が感嘆の声を漏らす。
玲子もまた目を細めていたが、ふと庭の隅に、不思議な花を見つけて足を止めた。
すらりと背を伸ばす茎に、鐘のような花を房なりに咲かせている。薄紫の花弁には斑点が散り、陽を浴びて妖しく揺れていた。
「あの花は……ジキタリス」
玲子は小さく呟いた。
「本で見たことがあります。とても美しいけれど……」
最初に姿を現したのは将吾である。
続いて、付添人として同行した尚文が馬車を降り立った。
そして、差し伸べられた将吾の手に導かれるように、着物姿の玲子がゆるやかに姿を見せた。
重厚な門をくぐると、目の前には見事な庭園が広がり、春の色を競い合うように、色とりどりの花々が咲き誇っている。整えられた植え込みの奥には、温室らしき建物まであるのが見える。
「久しぶりに訪れたけど……まるで花の園だな」
尚文が感嘆の声を漏らす。
玲子もまた目を細めていたが、ふと庭の隅に、不思議な花を見つけて足を止めた。
すらりと背を伸ばす茎に、鐘のような花を房なりに咲かせている。薄紫の花弁には斑点が散り、陽を浴びて妖しく揺れていた。
「あの花は……ジキタリス」
玲子は小さく呟いた。
「本で見たことがあります。とても美しいけれど……」