明治恋奇譚 〜藤堂様、ミエテマスヨ!~
玲子様、嫌疑をかけられます
将吾の優しげな声音に、一瞬だけ張り詰めていた玲子の心が緩む。
咎められると思っていたのに、穏やかに向き合ってくれるのだと、ほっと胸を撫で下ろした。
そして、玲子は安堵の言葉を口にする。
「あの……。藤堂様が、あの葡萄酒を口にされずにいて、良かったです」
その一言に、将吾の瞳がピクリと動く。
「……なぜ、あの葡萄酒を飲んではならぬと知っていたのか!?」
「そ、それは……」
玲子は口ごもる。まさか、幽霊の一将に教えてもらったなどと言えないからだ。
だが、将吾が知りたいのは、玲子が葡萄酒に毒が入っていた事を知っていたという理由だ。彼女の曖昧な様子を見逃せるはずもない。
微笑を浮かべたまま、冷たい色が目の奥に差し込んだ。
刹那、玲子の腕を将吾が鋭く掴む。
「貴様……早く理由を申せ!」
先ほどまでの柔和な雰囲気が嘘のように、軍人の鋭さが顔に浮かぶ。
玲子の目が大きく見開かれ、助けを求めるように辺りを見渡すと、すぐそばで浮遊している一将に視線が止まった。
その一将は、孫である将吾の非礼に怒り心頭の様子だ。
『……なんと無礼な! 命の恩人に対して、孫とはいえ許し難し!』
風がざわめき、庭園の空気が一変する。
木々がしなるほどの強風が吹き、あたりに黒い気が立ちのぼった。
「な、何だ……この気配は……」
咎められると思っていたのに、穏やかに向き合ってくれるのだと、ほっと胸を撫で下ろした。
そして、玲子は安堵の言葉を口にする。
「あの……。藤堂様が、あの葡萄酒を口にされずにいて、良かったです」
その一言に、将吾の瞳がピクリと動く。
「……なぜ、あの葡萄酒を飲んではならぬと知っていたのか!?」
「そ、それは……」
玲子は口ごもる。まさか、幽霊の一将に教えてもらったなどと言えないからだ。
だが、将吾が知りたいのは、玲子が葡萄酒に毒が入っていた事を知っていたという理由だ。彼女の曖昧な様子を見逃せるはずもない。
微笑を浮かべたまま、冷たい色が目の奥に差し込んだ。
刹那、玲子の腕を将吾が鋭く掴む。
「貴様……早く理由を申せ!」
先ほどまでの柔和な雰囲気が嘘のように、軍人の鋭さが顔に浮かぶ。
玲子の目が大きく見開かれ、助けを求めるように辺りを見渡すと、すぐそばで浮遊している一将に視線が止まった。
その一将は、孫である将吾の非礼に怒り心頭の様子だ。
『……なんと無礼な! 命の恩人に対して、孫とはいえ許し難し!』
風がざわめき、庭園の空気が一変する。
木々がしなるほどの強風が吹き、あたりに黒い気が立ちのぼった。
「な、何だ……この気配は……」