明治恋奇譚 〜藤堂様、ミエテマスヨ!~
玲子様、話します
将吾の声が、少しだけ和らいでいた。
玲子は濡れた瞳でまっすぐ将吾を見上げ、ゆっくりと頷いた。
「……信じていただけないのは当然です。ですが、わたくしには確かに、藤堂一将様が見え、声を聞きました。あの場で将吾様の命が危ないと、一将様は……わたくしに……」
震える声の中に、確かな決意の色があった。
将吾は、玲子の言葉をどう捉えてよいか分からなかった。常識で考えれば、そんなことがあるはずがない。
だが……。
彼女のまなざしに、噓をつく者の影はなかった。
先ほどからずっと、自分の不興や怒りを買うのを恐れてはいても、怯えて逃げ隠れるような言い訳はしていない。逃げず、ただ、信じてほしいと願う瞳だった。
「……俺の祖父が、幽霊としてお前に頼んだ、と?」
「はい」
「そんな荒唐無稽な話……」
将吾の口から出た言葉とは裏腹に、その声はどこか空虚だった。
否定しているようで、否定しきれない自分が居る。
もし仮に、玲子の言う通りだとしたら、この女性は、自分の命を救うために、信じてもらえないとわかっている言葉を、それでも口にしたのだ。
将吾はゆっくりと息を吸い込み、そして手を緩める。
「……済まなかった。腕……痛かっただろう」
玲子は濡れた瞳でまっすぐ将吾を見上げ、ゆっくりと頷いた。
「……信じていただけないのは当然です。ですが、わたくしには確かに、藤堂一将様が見え、声を聞きました。あの場で将吾様の命が危ないと、一将様は……わたくしに……」
震える声の中に、確かな決意の色があった。
将吾は、玲子の言葉をどう捉えてよいか分からなかった。常識で考えれば、そんなことがあるはずがない。
だが……。
彼女のまなざしに、噓をつく者の影はなかった。
先ほどからずっと、自分の不興や怒りを買うのを恐れてはいても、怯えて逃げ隠れるような言い訳はしていない。逃げず、ただ、信じてほしいと願う瞳だった。
「……俺の祖父が、幽霊としてお前に頼んだ、と?」
「はい」
「そんな荒唐無稽な話……」
将吾の口から出た言葉とは裏腹に、その声はどこか空虚だった。
否定しているようで、否定しきれない自分が居る。
もし仮に、玲子の言う通りだとしたら、この女性は、自分の命を救うために、信じてもらえないとわかっている言葉を、それでも口にしたのだ。
将吾はゆっくりと息を吸い込み、そして手を緩める。
「……済まなかった。腕……痛かっただろう」