明治恋奇譚 〜藤堂様、ミエテマスヨ!~
藤堂様、立ち往生です
「あれ? おかしいな」
御者がつぶやいたそのとき、馬車の速度がみるみる落ち、やがて停車した。
藤堂将吾は小窓を開け、前方の御者に声をかける。
「どうした?」
「旦那様、急に馬が歩かなくなっちまって……。ちょっと様子を見てきます」
やがて、御者の声が上がる。
「ありゃ、蹄鉄が外れかけてました!」
馬の蹄を保護する蹄鉄が外れると、馬は違和感を覚えて暴れたり、動かなくなったりする。
これはもう、蹄鉄工か獣医を探して直すしかない。
「そうか……時間がかかりそうだな」
ちょうど橋を渡り、町に入ってきたところだった。
家までは、歩こうと思えば歩ける距離。
将吾は小窓を閉めながら、馬車の中でグズグズと考えあぐねていた。
一方、そんな将吾の様子に、幽霊の一将は焦れ顔をし、仁王立ちで見下ろす。そして、息をスッと吸い込むと、大声で怒鳴りつけた。
『こら、早くせんか! 馬車になんぞ乗っておる場合じゃないぞ。さっさと降りぬか、鈍い男よ!』
もちろん、その声も姿も将吾には届かない。
御者がつぶやいたそのとき、馬車の速度がみるみる落ち、やがて停車した。
藤堂将吾は小窓を開け、前方の御者に声をかける。
「どうした?」
「旦那様、急に馬が歩かなくなっちまって……。ちょっと様子を見てきます」
やがて、御者の声が上がる。
「ありゃ、蹄鉄が外れかけてました!」
馬の蹄を保護する蹄鉄が外れると、馬は違和感を覚えて暴れたり、動かなくなったりする。
これはもう、蹄鉄工か獣医を探して直すしかない。
「そうか……時間がかかりそうだな」
ちょうど橋を渡り、町に入ってきたところだった。
家までは、歩こうと思えば歩ける距離。
将吾は小窓を閉めながら、馬車の中でグズグズと考えあぐねていた。
一方、そんな将吾の様子に、幽霊の一将は焦れ顔をし、仁王立ちで見下ろす。そして、息をスッと吸い込むと、大声で怒鳴りつけた。
『こら、早くせんか! 馬車になんぞ乗っておる場合じゃないぞ。さっさと降りぬか、鈍い男よ!』
もちろん、その声も姿も将吾には届かない。