明治恋奇譚 〜藤堂様、ミエテマスヨ!~
玲子様、戸惑います
『玲子殿は、難儀な家にて育ったものでござるな……』
将吾に付き添い榊原家を訪れていた一将は、藤堂家へ戻るやいなや、憐れむような目で玲子を見つめた。
玲子は愁いを帯びた微笑みを浮かべ、手元の本を静かに閉じる。
藤堂家の一室、玲子にあてがわれた部屋。そこに置かれていた一人掛けのソファーは、シェル型の優美なデザインのものが置かれていた。
実は、客室のソファーに感激していた玲子のために、将吾がこっそり取り寄せたものだ。
そんな経緯は知らない玲子だったが、今では、お気に入りの場所となって、穏やかな読書の時間を過ごしているのだ。
「わたくしの……榊原の家に行かれたのですか?」
『うむ、将吾に憑いて、ちょろっとな』
「……まさか、将吾様が直々に榊原の家へ?」
『そうだ。玲子殿が藤堂で過ごす上で、道理を通さねばなるまい』
「……そうでしたか。お忙しい中、そんな……。ご迷惑をおかけしてしまって……」
家の実情を将吾に知られてしまったことに、玲子は肩を落とした。
すべてを知っている一将は、顎を撫でながらニヤニヤと笑う。
ちなみに、滞在の名目が「花嫁修業」になっていることは、まだ玲子には伝えられていない。
孫たちの恋の行方が、この先どうなるのか、一将はすっかり高みの見物を決め込んでいる。
『まあ、次期当主としては、将吾も及第点だな』
将吾に付き添い榊原家を訪れていた一将は、藤堂家へ戻るやいなや、憐れむような目で玲子を見つめた。
玲子は愁いを帯びた微笑みを浮かべ、手元の本を静かに閉じる。
藤堂家の一室、玲子にあてがわれた部屋。そこに置かれていた一人掛けのソファーは、シェル型の優美なデザインのものが置かれていた。
実は、客室のソファーに感激していた玲子のために、将吾がこっそり取り寄せたものだ。
そんな経緯は知らない玲子だったが、今では、お気に入りの場所となって、穏やかな読書の時間を過ごしているのだ。
「わたくしの……榊原の家に行かれたのですか?」
『うむ、将吾に憑いて、ちょろっとな』
「……まさか、将吾様が直々に榊原の家へ?」
『そうだ。玲子殿が藤堂で過ごす上で、道理を通さねばなるまい』
「……そうでしたか。お忙しい中、そんな……。ご迷惑をおかけしてしまって……」
家の実情を将吾に知られてしまったことに、玲子は肩を落とした。
すべてを知っている一将は、顎を撫でながらニヤニヤと笑う。
ちなみに、滞在の名目が「花嫁修業」になっていることは、まだ玲子には伝えられていない。
孫たちの恋の行方が、この先どうなるのか、一将はすっかり高みの見物を決め込んでいる。
『まあ、次期当主としては、将吾も及第点だな』