明治恋奇譚 〜藤堂様、ミエテマスヨ!~
藤堂様、お口がへの字です
まだ反物の手配もついていないのに、気持ちが急いて、玲子は早速、採寸を始めた。
定規を手にした彼女の瞳は、これまで見たこともないほど生き生きと輝いている。
「尚文様、寸法を測らせて頂きたいのですが、よろしいでしょうか?」
「僕から? もちろん、いいよ」
口元をニヤリとゆがめ、尚文は勝ち誇ったように将吾をちらりと見やる。
もちろん、玲子が尚文を先に選んだのには、特別な意味などない。一将と背格好が近い尚文の採寸をしておけば、幽霊となった彼の分も想定できる。
ただそれだけの話だ。
だが、尚文にとっては、将吾にマウントを取るには十分なシチュエーションだった。
余裕のある笑みを返そうとした将吾だったが、頬がわずかに引きつってしまい、うまく笑えない。
それを見て見ぬふりで、尚文は玲子に尋ねた。
「腕は、どれくらいまで上げればいいの?」
何度も採寸経験がある尚文が知らないはずはない。しかし、玲子は素直に応じる。
「あの、これくらいの高さだと測りやすいです」
と、玲子は尚文の腕に手を添え、高さを調整する。
息が掛かるほどの近い距離。尚文は、ニヤリと口角を上げ、将吾をチラリと覗き見た。
すると、将吾は苦虫をかみつぶしたような顔をしている。
定規を手にした彼女の瞳は、これまで見たこともないほど生き生きと輝いている。
「尚文様、寸法を測らせて頂きたいのですが、よろしいでしょうか?」
「僕から? もちろん、いいよ」
口元をニヤリとゆがめ、尚文は勝ち誇ったように将吾をちらりと見やる。
もちろん、玲子が尚文を先に選んだのには、特別な意味などない。一将と背格好が近い尚文の採寸をしておけば、幽霊となった彼の分も想定できる。
ただそれだけの話だ。
だが、尚文にとっては、将吾にマウントを取るには十分なシチュエーションだった。
余裕のある笑みを返そうとした将吾だったが、頬がわずかに引きつってしまい、うまく笑えない。
それを見て見ぬふりで、尚文は玲子に尋ねた。
「腕は、どれくらいまで上げればいいの?」
何度も採寸経験がある尚文が知らないはずはない。しかし、玲子は素直に応じる。
「あの、これくらいの高さだと測りやすいです」
と、玲子は尚文の腕に手を添え、高さを調整する。
息が掛かるほどの近い距離。尚文は、ニヤリと口角を上げ、将吾をチラリと覗き見た。
すると、将吾は苦虫をかみつぶしたような顔をしている。