寡黙な消防士は秘密の娘ごと、復讐を終えた妻を溺愛する
3・再会
 私はパチパチと弾ける炎の音と焼き焦げてしまいそうなほどの熱を感じ、はっと意識を取り戻した。

「う……っ」

 口元を押さえ、あたりを見渡す。
 いつの間にか炎の勢いは目の前が見えなくなるほどに増している。
 早く逃げなければいけないと思うのに、私の身体はちっとも動かなかった。

「夏希……?」

 このままじゃ、丸焼きになってしまう。
 そんな危機感をいだきながら、私はとても大事なことに気づく。

 ――隣の椅子に座っていたはずの夏希が、見当たらないのだ。

「夏希! どこなの……っ!? 返事をして!」

 私にとって夏希は復讐を達成した末のご褒美であり、あの事件を風化させないための道具でもあった。

 ――私と同じように、一生苦しめ。

 そんなふうに自らに愛を注ぐ男の不幸を願った、罰が当たったのかもしれない。
 迂闊だった。
 トラウマに引っ張られて、大事な娘から目を離すなんて……! 
 そんな焦燥感をいだく一方で、ほっとしている自分に気づいた。
 成長するたびにどんどんとあの男に似ていく子どもとの生活には、限界が来ていたからだ。

 ――ああ。
 これでやっと、楽になれる。
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