寡黙な消防士は秘密の娘ごと、復讐を終えた妻を溺愛する
5・里帰り
「あ……っ!」

 車から降りて歩こうとした子どもが、脚を縺れさせてアスファルトの上に転がる。
 今までは脚を擦りむいたと、大泣きしていたのに……。
 すくりと自分で立ち上がった少女は、スカートの裾をぎゅっと押さえつけるだけで、涙をぐっと堪えていた。

「怪我はないか」
「うん……!」
「痛かったね。泣いてもいいんだよ」
「夏希がいい子でいなくちゃ、ぱぱがまたいなくなっちゃう! だから、がまんするの!」
「夏希は偉いな」
「えへへ! ぱぱ、もっと褒めて!」

 頑なに決意する様子は、誰に似たんだか……。
 思い当たる節を思い出して苦笑いを浮かべた私は、家族みんなで川の字になって手を繋ぐ。
 私は満面の笑みを浮かべる少女に、恐る恐る問いかけた。
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