捨てられOLを溺愛する根暗エンジニアの正体は?

1.会社のBBQ大会でフラれるなんて

 中小企業にはときどき偉い人の思い付きでイベントが開催されることがある。
 たとえばこのBBQ大会のような。
 土曜日だというのに澄み渡った青空の下で開催された会社のイベントに、彩葉は盛大な溜息をついた。

「流星さん。あ~ん」
 男ならきっと誰でも好きなオフショルダーワンピースを着た若い女の子から肉をあ~んされ、満面の笑みで「おいしいよ」と答えている男は、付き合って三年の彼氏、荒巻流星。
 たとえ会社のみんなに付き合っていることを内緒にしていたとしても、彼女の目の前で他の女といちゃつくのは非常識ではないだろうか。

「流星さんはぁ、彼女とかいるんですかぁ?」
 あざとい角度で見上げながら質問する若い女の子の胸元をしっかり見たあと、チラッと私を確認した流星の次の言葉はありえない言葉だった。

「いないよ」
「じゃあ、わたし、立候補しちゃおうかな~」
 さすがにそれは軽くかわすでしょ。
 そう信じていたのに。

「うわ、むちゃくちゃうれしい」
「本当!?」
 公開告白からのお祝いムード。
 完全に公認カップルになってしまった二人のイチャイチャは止まらない。

 居心地の悪い空間から逃げ出すように、彩葉はドリンクコーナーに逃げた。
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