捨てられOLを溺愛する根暗エンジニアの正体は?

4.身勝手な元カレ

 流星にフラれたBBQから1ヶ月。

 特に連絡もなかったので、彩葉は部屋にあった流星の服や小物をすべて処分した。
 こんなにあっさり捨てることができたのも、きっと凌のおかげだ。
 付き合おうとか、告白だとかそんな区切りは一切ないが、「九条さん」から「凌」に呼び名は変化した。もちろん私も「平野さん」から「彩葉」に。

「すごい。家でハンバーグが食べられるなんて」
「大げさだよ」
 凌と私はお互いのマンションを行き来するくらいの仲になった。

 といっても、キスどころか手すら繋いだこともないけれど。
 普段は社内で会えたらラッキー程度で無理に会うわけではなく、絶妙な距離感。
 だが、好きな曲や映画のジャンルが一緒で、一緒にいるのはとても居心地が良かった。

「来週公開の映画、一緒に……」
 一緒に見に行こうと誘おうとした彩葉の言葉を遮るように、玄関のチャイムが鳴る。

「通販、頼んだかな?」
 心当たりがないなと思いながら、彩葉はインターホンの画面をオンにした。

「……流星?」
 ガチャガチャと合鍵で玄関が開けられる音がする。
 そうだ。ここの合鍵を流星は持ったままだ。
 今さら重大な問題に気が付いた彩葉は、インターホン越しに話しかけた。

「入ってこないで」
『なんだよ、怒ってるのか?』
「今さら何なの?」
『もうすぐあいつとは別れるからさ』
 え? 意味がわからない。
 流星は何を言っているの?
 ガチャッと玄関が開き、流星は当たり前のように靴を脱いで上がり込んでくる。

「おい、男の靴があるけど……」
 リビングの扉を開いた流星は、凌の姿に目を見開いた。
< 15 / 37 >

この作品をシェア

pagetop