すれ違いの果てに見つけた愛
第十七章:二人の涙
夜のアパート。
静まり返った部屋の中で、私はソファに座り込んでいた。
翔の告白が耳に焼きついて離れない。
——「俺は最初からお前を愛していた」
——「突き放したのは守るためだった」
信じたい。
でも、信じれば再び傷つく。
揺れる心に耐え切れず、胸の奥がじんじんと痛んだ。
コンコン、と扉を叩く音がした。
嫌な予感がして立ち上がると、そこには翔が立っていた。
夜の街灯に照らされた瞳は真剣そのもので、私を逃さない光を宿していた。
「……もう帰ったんじゃないの」
「杏里。俺はまだ話したい」
押しのけるように部屋に入ってきた翔。
狭い空間が一気に熱を帯びる。
「翔さん……どうしてそんなに……私に執着するの?」
「執着じゃない。……愛だ」
「違う! だって——」
声が震え、涙が滲む。
「あなたに抱きしめてほしかった夜が、何度もあったの。
名前を呼んでほしかった朝もあった。
でも、あなたは一度も……振り向いてくれなかった!」
堰を切ったように言葉が溢れた。
翔の瞳が苦しげに揺れる。
「杏里……」
「私、ずっと寂しかったの。……冷たい屋敷で、一人で待って、何度も心が折れそうになった。
それでも“妻”だから耐えなきゃって、必死に笑ったのに……」
嗚咽で声が詰まる。
涙が頬を伝い落ちる。
翔はそっと近づき、私の肩を抱いた。
強くも優しい腕に包まれ、心が乱れる。
「……ごめん。俺が愚かだった」
「謝らないで……! 謝られると、余計に……苦しくなる」
「苦しませたくなかった。けれど結局、誰よりもお前を苦しめた」
翔の声も震えていた。
顔を上げると、彼の瞳にも光るものがあった。
「翔さん……泣いてるの?」
驚いて問うと、翔は苦笑を浮かべた。
「お前を失ったときより苦しいことはないと思っていた。……でも今、お前がこんなふうに泣いているのを見る方が何倍も辛い」
その言葉に胸が熱くなり、さらに涙があふれた。
二人して泣きながら、ただ抱き合った。
彼の胸に顔を埋めると、温もりがじんじんと伝わる。
四年前には得られなかったもの。
今、ようやく触れられた温度。
「翔さん……もう一度信じてもいいの?」
震える声で問う。
翔は強く私を抱きしめ、低く囁いた。
「信じなくてもいい。ただ……そばにいてくれ。それだけでいい」
その言葉に、胸が大きく震える。
信じることは怖い。
でも、この温もりを手放したくないと思ってしまった。
涙で濡れた夜。
互いに弱さを見せ合った私たちは、ようやく同じ場所に立てた気がした。
けれどまだ道は始まったばかり。
信じるか、逃げるか——心は揺れ続けていた。
静まり返った部屋の中で、私はソファに座り込んでいた。
翔の告白が耳に焼きついて離れない。
——「俺は最初からお前を愛していた」
——「突き放したのは守るためだった」
信じたい。
でも、信じれば再び傷つく。
揺れる心に耐え切れず、胸の奥がじんじんと痛んだ。
コンコン、と扉を叩く音がした。
嫌な予感がして立ち上がると、そこには翔が立っていた。
夜の街灯に照らされた瞳は真剣そのもので、私を逃さない光を宿していた。
「……もう帰ったんじゃないの」
「杏里。俺はまだ話したい」
押しのけるように部屋に入ってきた翔。
狭い空間が一気に熱を帯びる。
「翔さん……どうしてそんなに……私に執着するの?」
「執着じゃない。……愛だ」
「違う! だって——」
声が震え、涙が滲む。
「あなたに抱きしめてほしかった夜が、何度もあったの。
名前を呼んでほしかった朝もあった。
でも、あなたは一度も……振り向いてくれなかった!」
堰を切ったように言葉が溢れた。
翔の瞳が苦しげに揺れる。
「杏里……」
「私、ずっと寂しかったの。……冷たい屋敷で、一人で待って、何度も心が折れそうになった。
それでも“妻”だから耐えなきゃって、必死に笑ったのに……」
嗚咽で声が詰まる。
涙が頬を伝い落ちる。
翔はそっと近づき、私の肩を抱いた。
強くも優しい腕に包まれ、心が乱れる。
「……ごめん。俺が愚かだった」
「謝らないで……! 謝られると、余計に……苦しくなる」
「苦しませたくなかった。けれど結局、誰よりもお前を苦しめた」
翔の声も震えていた。
顔を上げると、彼の瞳にも光るものがあった。
「翔さん……泣いてるの?」
驚いて問うと、翔は苦笑を浮かべた。
「お前を失ったときより苦しいことはないと思っていた。……でも今、お前がこんなふうに泣いているのを見る方が何倍も辛い」
その言葉に胸が熱くなり、さらに涙があふれた。
二人して泣きながら、ただ抱き合った。
彼の胸に顔を埋めると、温もりがじんじんと伝わる。
四年前には得られなかったもの。
今、ようやく触れられた温度。
「翔さん……もう一度信じてもいいの?」
震える声で問う。
翔は強く私を抱きしめ、低く囁いた。
「信じなくてもいい。ただ……そばにいてくれ。それだけでいい」
その言葉に、胸が大きく震える。
信じることは怖い。
でも、この温もりを手放したくないと思ってしまった。
涙で濡れた夜。
互いに弱さを見せ合った私たちは、ようやく同じ場所に立てた気がした。
けれどまだ道は始まったばかり。
信じるか、逃げるか——心は揺れ続けていた。