【書籍化決定】身体だけの関係だったはずの騎士団長に、こっそり産んだ双子ごと愛されています
これが最後だから
「ライザ……」
何度も名前を呼びながら、イグナートが唇を重ねてくる。呼吸を乱しつつ、ライザは彼のキスに応えた。優しく重ねるだけのキスも、深く舌を絡めあうキスも、ライザの快楽を呼び起こしていく。
性急な手つきで制服のボタンを外され、胸当てを引き下ろされる。
こんなところで抱かれるなんてと思うけれど、これが最後なのだから構わないという気持ちもある。思わず抱きつくと、イグナートはそれに応えるように強く抱きしめてくれた。
◇
やがて、イグナートが荒い息を吐きながら上体を起こす。離れていったぬくもりをさみしく思いながら、ライザは彼をぼんやりと見上げた。
まるで別れを惜しむように何度も身体を重ねてしまったが、もうこれですべてが終わりだ。
「起きられるか、ライザ」
「ん……大丈夫」
時計を見れば、もう随分長い時間を過ごしていたことに気づく。早く、仕事に戻らねばならない。
怠いのを堪えて、ライザは身体を起こした。激しく抱かれたせいで腰のあたりが重たくてたまらないけれど、それに耐えて乱れた服装を整えていく。あとでこっそり回復薬を調合して飲まないと、仕事にならないかもしれない。
よろめきながら立ち上がったライザを、イグナートがうしろから抱きしめた。耳元に、彼の熱い吐息がかかる。
「どうしたの、イグナート」
「ライザと離れたくない。旅になんか……行きたくない」
珍しく気弱な声でそんなことを言う彼に、ライザは小さく笑った。
「もう、しっかりして、騎士団長様。浄化の旅がどれほど重要なものかは、イグナートだって知っているはずでしょう。怪我のないように、気をつけてね。旅の安全を、ずっと祈っているわ」
「必ず戻るから……待っていてくれるか」
耳元で囁かれた声に、ライザは一瞬息を止めた。だけど、勘違いしてはならないと言い聞かせてゆっくりと息を吐く。
浄化の旅は危険を伴うことも多い。無事に戻るためには、待っている人の存在が大事なのだろう。
そう考えたライザは、うしろから抱きしめるイグナートの手をそっと握った。
「えぇ、待ってるわ。だから、無事に帰ってきてね」
顔を見られていなくてよかったと思いながら、ライザは努めて明るい声を出す。しばらく黙っていたイグナートは、やがてライザの耳元に一度口づけると、分かったと言ってうなずいた。
「じゃあ、私……もう仕事に戻らなくちゃ」
部屋を出ようとしたライザの腕を、イグナートは笑いながら掴んだ。何事かと首をかしげると、彼は悪戯っぽい表情でライザの顔をのぞき込む。
「今日はもう業務終了だから、直帰していいはずだ。浄化の旅に必要な物品を届けてもらう名目で、終業時間までライザの時間を俺が押さえたから」
「え? いつの間に」
「しばらく会えなくなるんだし、こういう職権乱用くらい許されるだろ」
それに、とつぶやいてイグナートはライザの耳元に再び唇を寄せた。
「今抱かれてきました、みたいな色っぽい顔、誰にも見せたくないんだ。だから職場には帰さない」
「……っ」
ライザは慌てて自分の頬に手を当てる。イグナートと親密な時間を過ごしたことが、顔に出てしまっているのだろうか。
「家まで送る。少しでもライザと一緒にいたいしな」
そう言ってイグナートはライザに手を差し出した。
何度も名前を呼びながら、イグナートが唇を重ねてくる。呼吸を乱しつつ、ライザは彼のキスに応えた。優しく重ねるだけのキスも、深く舌を絡めあうキスも、ライザの快楽を呼び起こしていく。
性急な手つきで制服のボタンを外され、胸当てを引き下ろされる。
こんなところで抱かれるなんてと思うけれど、これが最後なのだから構わないという気持ちもある。思わず抱きつくと、イグナートはそれに応えるように強く抱きしめてくれた。
◇
やがて、イグナートが荒い息を吐きながら上体を起こす。離れていったぬくもりをさみしく思いながら、ライザは彼をぼんやりと見上げた。
まるで別れを惜しむように何度も身体を重ねてしまったが、もうこれですべてが終わりだ。
「起きられるか、ライザ」
「ん……大丈夫」
時計を見れば、もう随分長い時間を過ごしていたことに気づく。早く、仕事に戻らねばならない。
怠いのを堪えて、ライザは身体を起こした。激しく抱かれたせいで腰のあたりが重たくてたまらないけれど、それに耐えて乱れた服装を整えていく。あとでこっそり回復薬を調合して飲まないと、仕事にならないかもしれない。
よろめきながら立ち上がったライザを、イグナートがうしろから抱きしめた。耳元に、彼の熱い吐息がかかる。
「どうしたの、イグナート」
「ライザと離れたくない。旅になんか……行きたくない」
珍しく気弱な声でそんなことを言う彼に、ライザは小さく笑った。
「もう、しっかりして、騎士団長様。浄化の旅がどれほど重要なものかは、イグナートだって知っているはずでしょう。怪我のないように、気をつけてね。旅の安全を、ずっと祈っているわ」
「必ず戻るから……待っていてくれるか」
耳元で囁かれた声に、ライザは一瞬息を止めた。だけど、勘違いしてはならないと言い聞かせてゆっくりと息を吐く。
浄化の旅は危険を伴うことも多い。無事に戻るためには、待っている人の存在が大事なのだろう。
そう考えたライザは、うしろから抱きしめるイグナートの手をそっと握った。
「えぇ、待ってるわ。だから、無事に帰ってきてね」
顔を見られていなくてよかったと思いながら、ライザは努めて明るい声を出す。しばらく黙っていたイグナートは、やがてライザの耳元に一度口づけると、分かったと言ってうなずいた。
「じゃあ、私……もう仕事に戻らなくちゃ」
部屋を出ようとしたライザの腕を、イグナートは笑いながら掴んだ。何事かと首をかしげると、彼は悪戯っぽい表情でライザの顔をのぞき込む。
「今日はもう業務終了だから、直帰していいはずだ。浄化の旅に必要な物品を届けてもらう名目で、終業時間までライザの時間を俺が押さえたから」
「え? いつの間に」
「しばらく会えなくなるんだし、こういう職権乱用くらい許されるだろ」
それに、とつぶやいてイグナートはライザの耳元に再び唇を寄せた。
「今抱かれてきました、みたいな色っぽい顔、誰にも見せたくないんだ。だから職場には帰さない」
「……っ」
ライザは慌てて自分の頬に手を当てる。イグナートと親密な時間を過ごしたことが、顔に出てしまっているのだろうか。
「家まで送る。少しでもライザと一緒にいたいしな」
そう言ってイグナートはライザに手を差し出した。