【書籍化決定】身体だけの関係だったはずの騎士団長に、こっそり産んだ双子ごと愛されています
もしかしたら
聖女ヴェーラが浄化の旅に出る日、ライザは医務室のベッドの上にいた。
髪を乾かさずに眠ったせいか、熱を出してしまったのだ。
頭がぼーっとしているのは泣きながら眠ったせいだと思っていたのだが、同僚たちに熱がある! と大騒ぎされて医務室へと運ばれた。癒し手たちは外傷の治療はできても、病気には対処できない。
医者に風邪と診断され、ベッドで休むように命じられたライザは、自分で思っていた以上に高熱だったらしい。糸が切れたように眠りに落ち、目覚めた時にはすでに聖女もイグナートも旅立ったあとだった。
「なんというか……私らしい終わり方って感じね。ちゃんと見送りもできないなんて」
苦笑してライザはため息をつく。眠る前に解熱剤を飲んだので、今は随分と楽になっている。それでも、寝込んでいるうちに別れの時間が過ぎるなんて、間抜けもいいところだ。
「まぁ、昨日お別れは言えたし。あとは旅の無事を祈るくらいしか私にできることはないものね」
また目頭が熱くなってきたのを感じて、ライザは自分に言い聞かせるようにつぶやいた。
聖女が浄化の旅に出ても、ライザたち癒し手の仕事にそう変化はない。傷薬や回復薬を調合し、訪れる患者の治療をする。イグナートのいない騎士団に、薬を届けるのも変わらずライザの役目だ。
旅が始まってすでに一月ほどが経過しており、二つ目の結界の強化が先日終わったそうだ。聖女は、厳しい旅路を護衛騎士に守られながら懸命に進んでいるらしい。
最初の頃はイグナートの名前を耳にするだけで顔が歪むほどに胸が苦しくなっていたが、最近ではなんとか表情に出さずにいられるようになってきた。それでも、心の奥がざわつくことだけは今も変わらない。
いつしか、彼とのことはいい思い出だと言えるようになるのだろうか。
髪を乾かさずに眠ったせいか、熱を出してしまったのだ。
頭がぼーっとしているのは泣きながら眠ったせいだと思っていたのだが、同僚たちに熱がある! と大騒ぎされて医務室へと運ばれた。癒し手たちは外傷の治療はできても、病気には対処できない。
医者に風邪と診断され、ベッドで休むように命じられたライザは、自分で思っていた以上に高熱だったらしい。糸が切れたように眠りに落ち、目覚めた時にはすでに聖女もイグナートも旅立ったあとだった。
「なんというか……私らしい終わり方って感じね。ちゃんと見送りもできないなんて」
苦笑してライザはため息をつく。眠る前に解熱剤を飲んだので、今は随分と楽になっている。それでも、寝込んでいるうちに別れの時間が過ぎるなんて、間抜けもいいところだ。
「まぁ、昨日お別れは言えたし。あとは旅の無事を祈るくらいしか私にできることはないものね」
また目頭が熱くなってきたのを感じて、ライザは自分に言い聞かせるようにつぶやいた。
聖女が浄化の旅に出ても、ライザたち癒し手の仕事にそう変化はない。傷薬や回復薬を調合し、訪れる患者の治療をする。イグナートのいない騎士団に、薬を届けるのも変わらずライザの役目だ。
旅が始まってすでに一月ほどが経過しており、二つ目の結界の強化が先日終わったそうだ。聖女は、厳しい旅路を護衛騎士に守られながら懸命に進んでいるらしい。
最初の頃はイグナートの名前を耳にするだけで顔が歪むほどに胸が苦しくなっていたが、最近ではなんとか表情に出さずにいられるようになってきた。それでも、心の奥がざわつくことだけは今も変わらない。
いつしか、彼とのことはいい思い出だと言えるようになるのだろうか。