【書籍化決定】身体だけの関係だったはずの騎士団長に、こっそり産んだ双子ごと愛されています

王都へ

 次の休みの日、ライザはタマラと共に双子を連れて乗合馬車に乗った。朝早い時間帯だからか同乗者は少なく、双子たちは窓の外の風景に夢中だ。とはいえ二人の機嫌がいつ悪くなるかは分からないし、このあと二回の乗り換えを予定している。荷物も多いし、タマラが付き添ってくれて本当によかったとライザは感謝の気持ちでいっぱいだ。

 馬車が走り出してしばらくして、タマラがライザの方を見た。

「ライザちゃんは、王都に行ったことはあるの?」

「え……あ、そうですね、何度かは」

 思いがけない問いに動揺しつつも、ライザは曖昧にうなずく。貴族街に近づく予定はないから、両親やイグナートに出会う可能性は低いだろう。癒し手の同僚には平民の子もいたが、今のライザは髪を下ろしているし、日除けを理由に帽子をかぶっているから、雰囲気がかなり変わっているはずだ。

「あ、ごめんなさいね、あまり深く追求するつもりはないのよ」

「……すみません」

 申し訳なさそうな顔をするタマラになにを言えばいいか分からず、ライザも言葉少なにそう言って黙った。

 こんなにもよくしてくれる隣人に、ライザは嘘を重ねている。

 本当は伯爵家の娘で、双子の父親も貴族なのだと知られれば、今までのように気さくに接してはくれなくなるだろう。

 この嘘は、一生つき通さねばならない。ライザはもう、貴族令嬢であった自分とは決別しているのだから。
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